糖尿病とは
糖尿病とは、何らかの原因によって血液中のブドウ糖を細胞へ適切に取り込めなくなり、血液中のブドウ糖の濃度「血糖値」が慢性的に高くなる疾患です。高血糖(血糖値が高い状態)が続くと、全身の血管、あるいは全身の組織への障害をきたし、命を脅かす・QOLを大きく低下させる合併症のリスクが高くなります。
ほとんど症状のない糖尿病
糖尿病は、ほとんど症状が見られません。特に初期には無症状であるケースも多くみられ、これが受診の遅れを招いています。
また糖尿病と診断を受けてからも「症状がないから」と通院が疎かになってしまう場合もあります。
命を脅かす・QOLを大きく低下させる合併症
糖尿病の合併症としては、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などが挙げられます。これらの命を脅かす・QOLを大きく低下させる合併症を防ぐためにも、健康診断などで指摘を受けたときにはきちんと正式な診断を受け、もし糖尿病と診断されたときにはしっかりと治療に取り組むことが大切です。
なお、糖尿病の方の平均寿命は男性で約69歳、女性で約72歳と言われています。男女とも、全体の平均寿命から、10年以上も短くなっています。
血糖値について
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを指します。血糖値が高い状態を「高血糖」、低い状態を「低血糖」と呼びます。先述の通り、高血糖状態が続くと糖尿病を発症してしまいますが、ほとんど症状はありません。一方で、低血糖の場合にはさまざまな症状を引き起こします。
健康診断などで高血糖・低血糖を指摘されたとき、症状が気になったときには、放置せずに当院までご相談ください。
血糖値の基準
通常、空腹時血糖値は、約70~100mg/dlの範囲を「正常」とします。
ただ、健康な人でも食後には血糖値が一度上昇します。その後、膵臓から分泌されるホルモン「インスリン」の働きによって、ブドウ糖の吸収が進み、血糖値も下がります。
また、血糖値が低くなった場合には、インスリンと同じく膵臓から分泌されるホルモン「グルカゴン」の働きによって、グリコーゲンをブドウ糖へと変換することで、血糖値が元に戻ります。
血糖値が高いときのリスク
高血糖が続くと、糖尿病のリスクが高まります。また同時に、血管が硬く脆くなる「動脈硬化」を進行させます。
動脈硬化はさらに、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスク要因となります。
血糖値が低い場合
血糖値が下がり、おおよそ70mg/dl以下になった場合には、動悸、冷や汗、震え、気分の悪さといった症状が生じます。50mg/dl以下にまで低下すると、脳が正常に機能するエネルギーさえ不足し、意識低下、頭痛、めまいなどの症状が出現します。
低血糖は、糖尿病の薬を使用している方に起こりやすいため、薬物療法を受ける際にはそれら副作用にも十分な注意が必要です。
当院では、低血糖が起こったときの対処法についても、きちんとご説明しております。
糖尿病の原因
糖尿病は、大きく以下のような分類がなされ、それぞれ原因が異なります。
なお、糖尿病全体の90%以上を占めるのが、生活習慣の乱れを主な原因とする「2型糖尿病」です。
1型糖尿病
自己免疫の異常などを原因とし、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることで発症します。
比較的、若い世代での発症が多くなり、妊娠をきっかけに発症することもあります。
2型糖尿病
高カロリー・高脂肪の食事、食物繊維不足、運動不足、睡眠不足、ストレス、喫煙などの生活習慣の乱れを原因とし、インスリンの分泌が低下したり、インスリンの働きが悪くなることで発症します。
中高年世代での発症がほとんどですが、近年では若い世代での発症も見られます。
その他の糖尿病
遺伝子異常、疾患などを原因として発症する糖尿病もあります。
遺伝子異常を原因とするものには、膵臓のβ細胞機能に関わる遺伝子の異常、インスリンの働きの伝達機構に関わる遺伝子の異常などが挙げられます。
高血糖および糖尿病を引き起こす疾患としては、甲状腺・副腎・下垂体の内分泌疾患、膵外分泌疾患、肝臓疾患、感染症などが挙げられます。また、薬の副作用によって発症する糖尿病もあります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠して初めて軽度の糖代謝異常が見つかった状態を指します。妊婦さん全体の1割以上に見られる、身近な糖尿病です。母体、そしてお腹の赤ちゃんへの悪影響が懸念されます。また、妊娠糖尿病になった方は、その後糖尿病へと進行する可能性が高くなると言われています。
糖尿病の検査
糖尿病の検査は主に血液検査です。血液検査では血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)を測定します。糖尿病の診断基準は次の通りです。
- 早朝の空腹時血糖値が126mg/dl以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)検査開始から2時間後の値が200mg/dl以上
- 随時血糖値(食事からの時間を決めずに測定する血糖値)が200mg/dl以上
- HbA1cの値が6.54%以上
このうち、1~3のいずれかと4が確認されると、糖尿病であると診断されます。
1~4のいずれか1つが確認された場合は糖尿病疑いとなり、3~6か月後に再検査を行います。