糖尿病と運動療法

血糖値に対する運動の効果について

トレーニングマシン運動(特に有酸素運動)によって血流が改善すると、ブドウ糖の細胞への吸収が促進されるとともに、インスリンが効きやすくなり、血糖値が下がります。また、可能であれば筋力トレーニングもおすすめです。筋肉量が増えることで、インスリンがさらに効きやすくなります。
ただ、注意点もあります。負荷のかかる運動は、心臓、腎臓に負担をかけます。運動をする以上は、ケガのリスクもあります。ケガによって長期間運動ができなくなったり、モチベーションが下がってしまうと逆効果です。
また、高負荷の運動は、アドレナリンやカテコラミンといった血糖値を上昇させるホルモンの分泌を促し、一時的に血糖値が高くなることがあります。
必ず医師の指導のもと、ご紹介するポイントを押さえながら、運動療法に取り組みましょう。

どのような運動が効果的なのか

糖尿病治療における運動療法では、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせるのが理想です。

有酸素運動

ウォーキング、軽いジョギング、水泳などを指します。平たく言えば、ややゆったりと呼吸しながら行う、全身運動のことです。
1回20~30分程度の有酸素運動を、1日2回程度行うことをおすすめします。通勤や買い物などで歩いた時間を「ウォーキング」として計算しても構いません。1日1万歩を目指しましょう。
ただし、特に高血圧、心臓疾患、肥満などの合併がある方は、必ず医師と相談して運動の種類・強度・時間・頻度を設定しましょう。

(例)ウォーキング

背筋を伸ばし、やや大股で、かかとから着地するようにしてください。腕を意識して大きくふると、足を踏み出しやすくなります。
「ややきつい」と感じる強度が推奨されているため、運動療法におけるウォーキングの際には少し早めに歩きます。
また、水分補給用の飲み物を持って行うようにしましょう。

筋力トレーニング

足、腰、背中といった“大きな筋肉”を中心に、10~20回×2~3セット、週2~3回行います。スポーツジムなどに置いてあるような、特別なマシンなどは必要ありません。基本的には、ご自宅で簡単に行えるものです。年齢やお身体の状態などを考慮し、個別にメニューをご提案します。

(例)ふくらはぎのトレーニング

壁に両手をつき、両足のかかとを上げ、下げる動作をゆっくりと繰り返します。
必ず、壁に手をついてください。家具などに手をつくと、転倒のおそれがありますのでご注意下さい。

運動のポイント

以下でご紹介する強度(負荷)、頻度と時間、時間帯などは、あくまで目安です。特に合併症のある方、長く運動から離れていた方は、必ず医師と相談し、運動の種類や強度、時間、頻度などを決めていきましょう。

強度(負荷)

「ややきつい」と感じる程度の強度・負荷が推奨されます。
糖尿病治療における運動療法の場合、目安にする脈拍数(回/分)は【(220-年齢)×0.5】で算出できますので、こちらを目安にしてくださっても結構です。

(例)50歳の方の場合

目安にする脈拍数(回/分)=【(220-50)×0.5】
             =85回/分

頻度と時間

理想的な頻度は、毎日です。ただ、患者様によっては、厳格にルール化することで運動が嫌になってしまうことがありますので、相談しながら決定していきます。
目安としては、1回あたり20~60分、1週間で150分以上の運動が推奨されています。

時間帯

基本的に、時間帯は問いません。ただ、食後の血糖値の上昇を下げるためには、食後1~2時間のあいだに運動を行うのが有効です。

歩数計を活用しましょう

分かりやすい日々の目標値として1日1万歩を目指し、歩数計を活用しましょう。
最近では、スマートフォンや携帯電話にも万歩計のソフトやアプリが内蔵されています。

運動で気をつけること

運動療法は食事療法は2つで1セット

食事生活習慣病の治療全般に言えることですが、運動療法と食事療法は原則セットで行われます。「運動をしているから食事は改善しなくていい」「食事バランスが良いから運動をしなくていい」ということはありません。どちらかが欠けると、治療の効果が十分に得られません。また、運動をしたために食欲が増し、バランスの偏ったものをたくさん食べてしまう場合などには、逆効果となる恐れもあります。

低血糖を予防しましょう

インスリン、SU薬などを使用している場合、特に低血糖に注意する必要があります。運動時には低血糖の症状(冷や汗、動悸、ふるえ、脱力感、めまい、意識低下など)に注意し、ブドウ糖や軽食を用意しておきましょう。

適切な服装・シューズを使用し、こまめに水分補給をしましょう

脱水症状、ケガなどの予防のため、適切な服装とシューズ、水分補給用の飲み物を用意して運動に臨みましょう。

準備体操・クールダウンを忘れずに

運動前には、ストレッチをしたり関節を回したりといった準備体操を行いましょう。
疲労の蓄積や筋肉痛を予防するためには、運動後のストレッチも大切です。特に、ジョギングなど、ある程度の負荷のある運動を急にやめてしまうと、一時的に貧血になってしまうことがあります。終盤にウォーキングに切り替えるなど、軽い運動をしながら呼吸を整えるクールダウンの時間を作りましょう。

運動ができないケース・個別の細やかな指導が必要なケース

適度な運動は、基本的に糖尿病および生活習慣病治療において好影響をもたらします。ただし、以下に該当する場合には、必ず事前に医師に相談してください。運動ができなかったり、より細やかな個別の指導が必要になることがあります。

  • 空腹時血糖が250mg/dL以上
  • 運動で脱水症状になったことがある
  • 感染症がある
  • 自律神経障害が進行している
  • 網膜症が進行している
  • 腎臓疾患が進行している
  • 足に潰瘍、壊疽がある
  • 心筋梗塞など重い心臓疾患がある
  • 肺疾患がある
  • 骨、関節の病気・ケガがある

日常生活の身体活動量を増やそう

ウォーキング「運動」というと、仕事のあとや休日に時間を作り、その時間で歩いたり走ったり筋力トレーニングをしたりといった光景が思い浮かびますね。ただ、通勤時や買い物の際に歩いたり、エレベーターではなく階段を使ったり、掃除などの家事をしたりといったことも立派な「運動」です。観光で訪れた街を歩いたり、登山を楽しんだりといったことも同様です。
このように、「運動」はスポーツだけでなく、身体を使って動かすあらゆる動きのことを指します。もちろん、そこに「楽しみ」が加わると、なお継続しやすくなります。
ウォーキングやジョギング、水泳、筋力トレーニングといったスポーツ的運動にこだわり過ぎず、やや少し広い意味で捉えて、日常生活の中で「運動」する時間を増やすことも、糖尿病の治療・予防において大切です。

  • 通勤時、一駅分だけ歩く
  • デスクワークの休憩時にストレッチをする
  • 通販を減らし買い物に出かける
  • 散歩を習慣化する
  • エレベーター、エスカレーターでなく階段を使う
  • 掃除や洗濯などの家事を積極的に行う
  • 観光先でバス・タクシーではなく歩いて回る
  • 登山、ハイキング、バードウォッチングなどの身体を動かす趣味を見つける
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