こんな症状はIBS(過敏性腸症候群)かもしれません
直近3ヵ月の間に月に3日以上にわたって腹痛や腹部の不快感を繰り返し、下記の3つの症状のうち、2つ以上が当てはまる場合には、腸の中に何らかの問題があります。
- 排便することで症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数が増えたり減ったりする
- 症状とともに便の形状(外観)が柔らかくなったり硬くなったりする
これらの症状が現れているにもかかわらず、大腸に腫瘍や炎症などの病気がない場合には、IBS(過敏性腸症候群)の可能性があります。
IBS(過敏性腸症候群)とは
IBS(過敏性腸症候群)とは、「精神的ストレス」や「自律神経失調」などの原因で、腸が刺激に対して過敏な状態になることによって、便通の異常を起こす病気です。
腸が便を排泄するまでの過程には脳神経が関係しています。腸は、食べた物を消化・吸収しますが、その時にできる「不要物」を便として排泄します。腸が便を肛門側へ送り出すために、腸が受けた刺激や感覚を脳に伝えることによって、脳は腸の動きをコントロールしているのです。
IBS(過敏性腸症候群)では、この「腸が受けた刺激や感覚」が非常に過敏な状態になっているため、痛みなどを感じやすくなっています。その結果、少しの刺激で腸の状態が不安定になってしまうのです。
また、この腸を含む内臓の知覚が過敏になる仕組みには、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンが関係しています。セロトニンにはトリプトファンと呼ばれる前駆物質(ぜんくぶっしつ:セロトニンに変わる前の物質)が欠乏すると知覚が過敏となってしまい、不安を引き起こします。IBS(過敏性腸症候群)の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、このセロトニンが関係しているという説から、強い不安やストレスもIBS(過敏性腸症候群)の原因として考えられています。
さらに、細菌やウイルスによる感染性腸炎の回復後も、腸が過敏になりやすいとされています。これは腸炎によって腸の粘膜が弱くなり、知覚過敏の状態になる可能性があるからです。
IBS(過敏性腸症候群)の統計
IBS(過敏性腸症候群)の患者数についてみると、2001年から2010年の間では、日本人のうち約10%と推計されています。女性に多く、年齢が上がるにつれてIBS(過敏性腸症候群)になる人の割合は減っていく傾向があります。
IBS(過敏性腸症候群)の検査と治療
IBS(過敏性腸症候群)の検査
IBS(過敏性腸症候群)の確定診断をするためには、それ以外の腸の病気を発症していないことを確認していく必要があります。まずは、血液検査、尿検査、便検査を行います。そのほかにも、過去に大腸の病気をしたことがある方や家族に大腸の病気にかかったことのある方、体重の減少など異常な所見がある方には、大腸内視鏡検査や大腸造影検査、他の症状によっては腹部超音波検査、腹部CT検査を行うこともあります。これらの検査を行い、全てにおいて異常がなかった場合に、IBS(過敏性腸症候群)と診断されます。
IBS(過敏性腸症候群)の治療
IBS(過敏性腸症候群)の治療としては、まず生活習慣や食生活の見直しを行います。症状が出ている際には刺激物やアルコール、高脂肪食は控えるようにします。生活習慣や食生活を見直しても症状が改善されないという場合には、お薬による治療(薬物療法)が行われます。
薬物療法としては、消化管機能調節薬を服用することや、プロバイオティクス、高分子重合体というお薬を使って腸の調子を整えていきます。これに加えて下痢や便秘といった症状を改善させるためのお薬や、漢方薬も併せて使うことがあります。
これらのお薬を使っても改善が見られない場合にはさらに強いお薬を使用したり、抗アレルギー薬や抗うつ薬、抗不安薬を合わせて使用したりします。