2020年11月20日
無症状者に対する新型コロナウイルス感染症検査での注意点について、日本感染症学会ホームページ 新型コロナウイルス感染症トピックスから掲載文を引用します。
ダイヤモンド・プリンセス号での検証で、新型コロナウイルス感染症に感染していても約半数が無症状である無症状病原体保有者であることが明らかになっています。
現在は、無症状の患者であっても医師が必要と判断した場合には PCR検査が実施できます 。
最近では、院内感染対策や濃厚接触者だけでなく、経済活動および国内での移動の再開による感染拡⼤への懸念から無症状者に対するスクリーニング⽬的での新型コロナウイルス検査が実施されています。
しかし、有病率が低い無症状者を対象に検査を実施する場合には、結果の解釈に注意が必要です。
無症状者に対する検査
医療機関や施設等での感染拡⼤を懸念してスクリーニング⽬的に検査を実施する場合には、偽陰性による⾒逃しを防ぐために感度が⾼い検査を実施する必要があります。
精度が高いPCR検査は、無症状者に対する検査として使⽤することができると考えられます。
しかし、PCR検査時の⿐咽頭ぬぐい液の採取は患者様への負担があるだけでなく、実施にあたって適切な感染対策が必要です。
そのため、有症状者では⿐咽頭ぬぐい液と⾼い⼀致率を認める唾液 を⽤いることも選択肢となります。
厚⽣労働省は 2020 年 7 ⽉ 17 ⽇、新型コロナウイルス感染症の診断に⽤いる PCR 検査および抗原検査について、唾液検体を⽤いた検査の対象を無症状者(空港検疫の対象者、濃厚接触者など)にも拡⼤する⽅針を⽰しました。
これまで唾液 PCR 検査と唾液抗原定量検査は、発症 9 ⽇以内の有症状者が対象となっていました。なお、簡易検査キットを⽤いる抗原定性検査については、無症状者は従来通り対象としません。
抗原検査は簡便に実施できるという利点がありますが、精度の問題で、現状では無症状者を対象にスクリーニング⽬的で抗原検査を実施することは推奨されません。
検査が陰性となった場合
検査で陰性となった場合は、「検体に遺伝⼦検査で検出できる数の新型コロナウイルスが含まれていなかった」ことを意味します。
そのため、検査で陰性であれば 新型コロナウイルス感染症への感染を否定できるわけではなく、感染初期で今後発症する可能性があることも含めて対象者に説明する必要があります。
検査が陽性となった場合
PCR検査の結果判定はガイドライン に⽰された⽅法で実施している施設が多いと考えられますが、図 1 に⽰すような増幅曲線の場合には陽性とすべきか判断が難しいです。このような場合には、同⼀検体もしくは新たに検体を採取して再検査をすることが望ましいです。
PCR 検査以外の検査で陽性となったときには、無症状でも新型コロナウイルスのウイルス量が多い可能性があります。
現時点ではこれらの検査の特異度は明らかでないものの、特異度が⾮常に⾼い検査であっても有病率が低い集団を対象として検査を実施した場合には陽性適中率は低くなります。
明らかな曝露歴のない無症状者を対象とする場合は有病率が⾮常に低いと考えられるため、検査で陽性となっても偽陽性の可能性を考える必要があり、PCR検査での再検査も考慮します。
無症状病原体保有者への対応
新型コロナウイルス感染症は指定感染症として定められているため、検査結果から無症状病原体保有者と判断された場合は、⼊院療養が基本となります。
しかし、対応可能な病床数には限りがあるため、地域によっては無症状者や軽症者は⾃宅や施設での療養も可能です。
⾃宅や施設で療養する場合には、適切な健康・感染管理を徹底する必要があります。
参考⽂献
(令和 2 年 6 ⽉ 19 ⽇版).
⽤に関するガイドライン 令和 2 年 5 ⽉ 13 ⽇.
COVID-19 抗原検査についての基本的な考え⽅ 2020 年 5 ⽉ 26 ⽇(第 1 版).
(https://www.jslm.org/committees/COVID-19/20200427.pdf).
2020 年 7 ⽉ 31 ⽇
⼀般社団法⼈⽇本感染症学会
⼀般社団法⼈⽇本臨床微⽣物学会
⼀般社団法⼈⽇本臨床検査医学会